馬は高い運動能力を持つ動物ですが、その反面、暑さには弱く体温調節には苦労しています。
その理由の一つが、馬の汗にあります。
馬も人間と同じように運動した時に、体内にこもった熱を外へ逃がすために汗をかきますが、馬の汗は白く泡立つことがあります。
これは何故なのでしょうか?
今回は馬の汗が白い理由や汗の色について調べたことシェアします。
カバの汗がピンクでカモシカの汗が青いことを初めて知りました。
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白い汗の理由
馬の汗が白く泡立つのは、馬の汗に含まれる特殊なタンパク質である「ラセリン」が原因です。
ラセリンは水に溶けにくく、汗が蒸発するときに表面に残ります。
そのため、馬の毛に白い粉状のものが付着して、汗が白く見えるのです。
ラセリンは空気と混ざると泡になります。そのため、馬の汗が泡立って見えることがあります
ラセリンは紫外線を反射して日焼けを防ぎます。
ラセリンが馬の皮膚を紫外線から守る役割も果たしています。
またラセリンは、水と油を混ぜることができる界面活性剤のような働きをします。
界面活性剤とは、洗剤やシャンプーなどに使われる物質で、水と油の間に入って、両方に親和性を持つことで、水と油を分離させないようにするものです。
ラセリンは、馬の皮膚の表面にある油分と、汗に含まれる水分を結びつけて、皮膚の水分量を保ちます。
また、ラセリンは、汗が蒸発するときに、皮膚の表面に薄い膜を作って、水分の蒸散を防ぎ、皮膚が乾燥しないように守っています。
馬と人間の「汗腺」の違い
馬の汗は白くて臭いがきついのに、人間の汗は透明で無臭です。
これは汗腺の種類によるものです。「汗腺」とは、汗を作って表皮に分泌させるものです。
人間の汗腺には、エクリン腺とアポクリン腺の二種類があります。
エクリン腺は全身に分布しており、水分と塩分を主成分とする汗を分泌します。
この汗は体温を下げるために蒸発しますが、色や臭いはありません。
アポクリン腺は脇や陰部などに限られており、緊張や精神的に興奮した時に反応して脂肪やタンパク質を含む汗を分泌します。
この汗は細菌によって分解されるときに臭いを発しますが、色はありません。
馬の汗腺は、人間のアポクリン腺に似ており、全身に分布しています。
馬の汗は、水分と塩分のほかに、ラセリンや乳酸などを含んでいます。
馬の汗は、人間のエクリン腺の汗よりも粘度が高く、蒸発しにくいです。
そのため、馬の汗は白く見えるだけでなく、臭いも強くなります。
馬の体温調節能力
馬は、人間よりも体温調節能力が低いと言われています。
人間とは違う汗腺なので、運動をしていない時は汗をかきづらく、体温調節が難しいため、暑さに弱いのではないかと言われています。
馬の正常な体温は37.5℃~38.5℃ですが、この範囲を超えると、馬はストレスを感じます。
そのため馬は暑い環境に長くいると、脱水や熱中症になる危険があります。
馬も汗をかいて暑さに対応しますが、馬の汗は蒸発しにくいため、効率的な体温調節にはなりません。
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馬は他にも体温調節のために、呼吸数を増やす、血管を拡張する、毛穴を開閉する、水分補給や水浴びをする、日陰や風のある場所での休息、といった方法で体内から熱を放出しています。
馬の体調は汗で分かる
馬の汗は、色や量、場所によって、馬がどんな気分や体調なのかを知ることができます。
例えば、馬が怒っているときは、首や背中に濃い色の汗が出ます。
馬が緊張しているときは、目や鼻に薄い色の汗が出ます。
馬が疲れているときは、全身に白い粉の汗が出ます。
馬の汗を観察することで、馬の気持ちや健康状態を理解することができます。
その他の動物で汗の色が変わった動物がいるのを知っていますか?
カバの汗がピンクな理由
カバもまた暑さに弱い動物です。
カバは水中で生活することで体温調節をしていますが、陸上に出る時に赤い汗をかきます。
カバの皮膚には、ヒポスダーミンとノロルビンという二種類の特殊な分泌物があり、これがカバの汗がピンクの理由です。
ヒポスダーミンは透明で無色ですが、空気に触れると赤く変化します。
ノロルビンは橙色で、紫外線に反応して赤く変化します。
これらの分泌物は、カバの皮膚を乾燥や紫外線から守るだけでなく、抗菌や殺菌の効果もあります。
カバの汗は、これらの分泌物と混ざってピンク色に見えるのです。
カバの汗は、カバが水から出たときや、日光に当たったときに赤く見えます。
カバは、水中で生活することが多いので、水に濡れているときは、分泌物が流れ落ちて赤く見えません。
また、カバは、暑い時間帯は水中や日陰で過ごすので、日光に当たる時間も少ないです。
カバの汗が赤く見えるのは、カバが水から出て乾いたときや、日光に当たった時だけです。
カモシカの汗が青い理由
カモシカは日本の特別天然記念物にもなっており、山岳地帯に住んでいます。
カモシカは暑さに弱く、夏には高山に移動します。
カモシカも汗をかくことにより体温調節をしますが、その汗が青いことで知られており、そのためにアオジシとも呼ばれています。
青い汗は、カモシカの汗に含まれるビリベルジンという色素が原因です。
ビリベルジンは、赤血球の分解産物で、通常は肝臓で処理されて尿や便として排出されます。
しかし、カモシカは、高山での低酸素環境に適応するために、赤血球の量が多くなります。
そのため、ビリベルジンの量も増えて、汗に溶け出します。
カモシカの汗は、ビリベルジンによって青く染まるのです。
まとめ
馬の汗が白い理由は、ラセリンという糖タンパクが含まれているからでした。
ラセリンは界面活性剤のように水と油を混ぜる性質があり、空気と混ざって泡立ちます。
その泡が白く見えるのです。
他の動物では、カバが赤い粘液を分泌して皮膚を守り、カモシカが青い汗をかくという珍しい例があります。
動物の汗は、色や成分によってさまざまな役割を果たしていることが分かります。